此の鳥は


此れは、姿を持たず、形を持たず、輪郭を持たず、影を持たない。
 というのに砂漠の上に落ちた一粒の真珠にすぎない此れは、繊密なよい目を持ち、その目から見たもの、例えば山の皺や海の襞などそのままの表情を語らう口を持つ。

 人智を越えた遼遠の果てにいる此れは、悪しき心も良き心も持たず、しかして地上の幸いなる星回りによって此れは善良に位置する。
 そのため粛々たる月の下にいる者皆に等しく厚誼をもたらし、これが隣人とも呼ばれる所以である。

 さて、混沌とした此れの彼方の夢は全知を見える事であるが、およそこの世というものは直ちに終わりそうには無い。やがては訪れる星の終わりを前にする事、その星霜の最中に蕩けるのを喜びとして、今宵も子らに物語を贈るのだ。